登魂日記

登山の山紀行、おすすめの山岳本、映画などを紹介します。

2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧

急登の先に、富士の祝福を―本社ヶ丸で迎えた新年の誓い

2021年1月3日、本当なら1月3日の登り始めは谷川岳のはずだった。しかし、近年では珍しい大雪の予報で断念。「じゃあ、どこにしようか」と山地図や先人の文献を漁ったのが昨日の夜。 去年の宿題に山梨の本社ヶ丸(ほんじゃがまる)を残していた。山納めにする…

晴登雨読『わが山山』〜深田久弥、山への恋文

晴れた日は山に登り、雨の日は山を想う。そんな日々の中で、山岳の書を読むこともまた、ひとつの登山。今回は、昭和9年(1934年)に刊行された、深田久弥さん初の山の紀行・随想集『わが山山』を手に取る。 《山々》ではなく、《山山》。この二文字に、深田…

御嶽〜炎と信仰と噴煙の聖峰

2015年9月15日、木曽の名峰・空木岳に登ったとき、山頂から富士山と同格のオーラの山が見えることに自分の眼を疑った。まさか日本にそんな山があるわけがない。しかし何度見返しても、風格と存在感が他の山とは別次元。凄惨な犠牲を生んだ大噴火から1年、赤…

鳥見山、万葉の余韻、山に刻む一年の終わり

大晦日に山へ登るのは、令和元年の塔ノ岳以来。2月に吹雪の蔵王を訪れたものの、その後に腰痛が再発し、登山は忽然と止まった。両手で数えるほどの山行。頂を踏んだ回数は少なく、山に身を置いた時間は短かった。 それでも、さほど悔いの残る一年ではなかっ…

鳳凰山とオベリスク〜摩天楼を背に、神々の尾根を歩く

車窓からは「熊注意」の看板が点在し、タクシーのNHKラジオからは ORANGE RANGEの『花』 が流れていた。 2019年5月1日、元号が平成から令和に変わった。その瞬間は新宿の税務署通りのファミリーマートにいた。すぐに何か変わるわけじゃない。翌日の登山に備…

死の白銀・八甲田山と伝説の雪中行軍に魅せられたクライマー

八甲田山(平成30年12月15日) 映画『八甲田山』に憧れ、初めて酸ヶ湯温泉を訪れたのは 2018年12月15日。まだ平成の時代だった。 これまで経験したことのない積雪量。スノーシューをつけ、先輩やアミさんとラッセルしながら進むが、一向に前へ進まない。ただ…

吹雪く蔵王〜樹氷の美術館から白い魔境へ

名山に囲まれた山形は、かつて「野方」「里方」に対して「山方」と呼ばれ、それが「山形」の語源となった。深田久弥さんの『吹雪く蔵王』を読んで以来、蔵王は憧れの山。そして、旅館で飲んだ日本酒・十四代の衝撃は忘れない。雪山のあとの温泉は格別だが、…

日本最古の峠・雁坂峠〜雨と風と霧の秩父往還

「人生は宿題があったほうが面白い」。先輩と繋げてくれた登山家の口癖だ。先輩も自分も登山を引退したが、心残りの山がある。 峠の魅力は、その先に何が見えるのだろうと、空想と妄想を掻き立ててくれることだ。雁坂峠(かりさかとうげ)は、『日本書紀』に…

両神山、地図の読めないクライマーとラストクライム

クリスマスが近づくと、街はイルミネーションに輝き、山々は新雪に彩られる。 「両神山まっ白だよ」 埼玉に住む先輩からLINEが届いたのは、令和元年12月23日の夜だった。初めてこの山を登ったのは2015年11月28日。岩の砦とも称される両神山を、戦友となる先…

晴登雨読〜登山マンガ『未亡人登山』のすゝめ

平成最後の年から令和にかけて、KDDIのブログサービス『g.o.a.t』で登山に関する記事を書いていた。最も思い出深いのが、令和最高の登山マンガ『未亡人登山』のレビューだ。作者・板橋大祐さんが読んでくれ、Twitterで何度も紹介してくれた。 「このレビュー…

雪山の魅惑〜冬の肌の雪山紀行

新宿のなか卯のお姉さんが「ひとの肌には季節があるよ」と教えてくれた。彼女の診断によると、ぼくの肌は『冬』らしい。 これまで友人たちからは「夏休みの少年みたいだね、年中」と言われることが多かった。けれど、お姉さんは少し奥にある何かを覗いてくれ…

谷川岳、一ノ倉岳へ—“魔の山”が魅せた究極の雪景色

映画ファンにとって生涯の一本があるように、クライマーにも人生のベスト登山がある。令和元年3月9日の谷川岳は、登山人生のトップ・オブ・トップだった。 「本当のピークは山頂の先にある」 この言葉が心に刻まれた、会心の登山となった。 世界最高のスポー…