登魂日記

登山の山紀行、おすすめの山岳本、映画などを紹介します。

2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧

沢を遡る。山が教えてくれた、生まれ直しの道

まだ登山道がない時代、先人たちは沢を登り山を越えた。沢を渡渉するのは危険も伴うが、藪がなく谷の水流を辿ることで道迷いせず峠や山頂を目指せる。水や魚もいるから食糧の確保もできた。沢登りは修験道を除けば、登山の原点とも言われている文化。 山登り…

誰もいないギボシの頂で、縄文人とピーターパンに会った〜編笠山から西岳まで

東京に住むクライマーの特権は富士山と八ヶ岳に日帰りで登れることだ。 「八ヶ岳に登って山を好きにならなければ登山の才能はない」 深田久弥さんの言葉どおり、八ヶ岳はどこを切り取っても名峰。これまで8座のうち半分まで踏破し、今回は日本最古の登山の場…

多峯主山の地図とコンパス、山と心を通わせる技術

登山を始めて6年。まるで小学校を卒業するかのように、山の世界を駆け抜けてきた。2014年に初めて山の扉をノックし、2017年には1年間休止した時期もあったが、今こうしてまた歩みを進めている。 これまでの相棒は、スマホの地図アプリとGPS。頼れる現代の文…

大菩薩ブルーの下で「介山荘」〜雪を願う山小屋の灯(大菩薩峠)

山に足を踏み入れた瞬間、日常の喧騒が遠のく。それだけでも非日常だが、山小屋に泊まると、その感覚はさらに際立つ。不便な環境が、都会の便利さを忘れさせ、素朴な時間の流れを教えてくれる。特に都会に住んでいると、その違いは鮮烈だ。 転職した令和3年…

大菩薩峠、牛奥ノ雁ヶ腹摺山、時空の裂け目、風となり、峠を駆ける

山頂に立つ瞬間の高揚感は格別だが、それと同じくらい「峠」という場所に惹かれる。言葉の響き、そして「山」に「上」「下」と書く字面の美しさ。地図の中に「〇〇峠」を見つけるたびに、どんな景色が広がっているのか、どんな道が待ち受けているのかと心が…

権現山、百蔵山、扇山、北都留三山〜冷えたビーフシチューと、燃える朝日

2021年1月10日(日)。三連休の中日。奈良にいた頃に付き合っていた人の誕生日だ。あれから八年。たまに発作のように思い出すことはあるが、特別な感情はもう湧かない。不思議なのは、徐々に顔が思い出せなくなっていること。それなのに、声だけは鮮明に覚え…

富士山〜孤高の頂、七度目の呼び声

富士山に挑むこと六度。しかし、七度目の足取りはまだない。 最初の登頂は2015年10月。単独で0合目から歩き、佐藤小屋に一泊した。山はまだ雪を抱いてはいなかった。 翌年の5月、埼玉の先輩とともに、憧れだった雪の富士を踏みしめる。登頂を果たして泣いた…