登魂日記

登山の山紀行、おすすめの山岳本、映画などを紹介します。

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

神々が宿る三輪山〜悠久の歴史に包まれた登拝の旅

失速と再起の三輪山 令和7年7月29日 12年いた新宿を離れた。桜井へ戻ることにした。 炎天下、久しぶりに町を歩く。どこもかしこも昔のままのようでいて、何かが違う。 三輪山の登拝が、8月1日から1ヶ月間、禁止される。熱中症対策。時代が、少しずつ音もなく…

京都・愛宕山〜Time after time、天気雨と上山

立命館大学に通っていた4年間は、極真空手の道場と京極の映画館に入り浸っていたので、京都の名所はおろか、山など一つも登ったことがなかった。 そんな学生時代、印象に残っているのが天気雨。金閣寺近くの下宿から立命館大学の正門に通う昼下がり、何度と…

三頭山〜仮病とヒグラシ、変わりゆく奥多摩、変わらぬ山の呼吸

梅雨という言葉が、年々その存在感を薄めている。とはいえ、令和の始まりの頃には、登山者にとってはまだ切実な季節の試練だった。週末クライマーにとって、梅雨の時期ほど悩ましいものはない。いかに晴れの谷間に山へ向かうかが鍵。天候との勝負も登山の醍…

宝登山〜神話に登る。火を止めた山、もう一つの“まほろば”

登る山を選ぶ基準に「「ヤマトタケルにゆかりがあるかどうか」」がある。 ヤマトタケルは奈良県桜井市の生まれ。地元の英雄であり、「大和は国のまほろば(奈良は国の中で最も素晴らしい場所である)」と詠んでくれた存在に、誇りを感じる。 武蔵の国の名も…

平標山1983m〜霧の中にいた少年の影、幻の稜線と、戻ってきたミレーのバッグ

梅雨がなく、雨季でも週末は必ず山にいた令和元年。9月末からは3週連続、秋雨のなかの山登りとなっていた。週末や休日に雨が襲う悲劇。偶然なのか必然なのか、令和は気象との闘いの時代。谷川連峰・平標山(たいらっぴょうやま)の雨を予想したのはヤマテン…

石老山〜苔むす石と、コーヒーの香り、明治の駅から、令和の山へ

「石老山(せきろうざん)」は、神奈川県の相模湖にあり、高尾駅から1駅と、中央沿線で最も身近な山の一つに数えられる。 山名が示すように、古い岩と苔むす石が連なり、標高702メートルと低山ながら、都会の喧騒から逃れる駆け込み寺として最高だ。 令和元…

『雪炎―富士山最後の強力伝』〜小さな体で、富士を越えた男

「一富士二鷹三茄子」と言われるように、日本でもっとも縁起が良いのは富士山である。「はじめに富士山ありき」 そんな山国ニッポンで生きる日本人に正月に読んで欲しい本がある。 富士山最後の強力(ごうりき)、並木宗二郎さんの半生を描いた『雪炎―富士山…

武甲山〜奥武蔵の名峰、失われた山を越えて

新宿から山へ向かうのに、京王線・中央線・小田急線ではなく、西武線に揺られるときがある。秩父・奥武蔵に向かうときだ。秩父・奥武蔵は近年、観光地として注目を集めている。その奥武蔵の象徴が『武甲山(ぶこうさん)』である。これほど男性的なオーラを…

伯耆大山〜孤独の凍土、冬の独奏

令和2年1月10日、世界の始まりを告げる夜明けの向こうに、伯耆大山が浮かび上がった。この瞬間に出逢うために、山を登り続けている。新宿からバスに揺られ、13時間。米子駅に降り立ち、大山寺へ向かう始発バスの車窓に、その姿はあった。 初めてライターとし…